化学兵器犯罪
先日の旅行中ずっと読んでいた本。化学兵器の開発・使用法の歴史を、文献や政治的流れを根拠に辿っていく。政治的・戦争戦略的な話題がメインで、その他にオウムのサリン使用などテロリストが毒ガスを用いることへの脅威など比較的新しい話題も取り上げている。
以前crinさん*1が「旧日本軍の兵器がいかにヘタレだったかを検証したサイト」を紹介していたが、戦車や飛行機だけでなく化学兵器も材料不足技術不足で、欧米の化学兵器と比べると時代遅れで兵器として役に立たなかったことがわかる*2。対中国戦では役に立ったらしいけど……でも運搬の難しさや味方を毒ガスに曝すリスクを考えると、何だか割に合わないというかトホホな感じ。
化学兵器の位置づけ、すなわち開発だけに留めるのか・兵器として実戦に用いることを前提に作るのか、軍全体の方針が決まっていなかったというエピソードも考えさせられた。ただでさえ資源に乏しい国なんだから、ちゃんと話し合って使い方を決めなきゃダメじゃん! コミュニケーション不全は伝統的な御家芸なのかしら。
あと、化学兵器は「貧者の核」と言われるけど、殺傷力や破壊力は核の方が断然上で、先進国が化学兵器を廃棄できるのは核を持っているからだという話はトリビア。『「化学兵器=非人道的」と言われるけど、では人道的な兵器などあるのか?』という問いかけも言われてみれば無いでしょうなあという感じ。
総じて面白い本だった。次は参考文献に取り上げられていた、化学兵器開発者の手記を読みたいなあ。
- 作者: 常石敬一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/12/21
- メディア: 新書
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