離乳の食文化―アジア10か国からの調査報告

 最近仕事の関係で、乳児がちょっとしたマイブーム。で、これ。
ハチミツ*1を舐めさせるとか、ミロを離乳食に使うとか、「人生は酸いも甘いもある」ことを教えるために、誕生後哺乳より先に甘いものと苦いものを舐めさせる儀式がある、なんて話は面白かった。
 ただ、「経済的な問題により、貧困層の方が食の欧米化が進んでおらず、伝統的な食文化の形態がよく現れているであろうと考え」低所得者層を対象者に選んだという前置きは、ある学問の分野では*2定説なんだろうか? 経済的な制限を考えると用いる食材も限定されてくるはずで、あくまで「ある国の貧困層にとっての」伝統的な食の形態になっているのであって、「その国の伝統的な食形態」ではないと思うのだが。しかも貧困層貧困層なりの現代に合わせた変化をしているだろうし。気になってしまって、どうもすんなり読めなかった。
 あと、母乳哺乳も離乳食もそうだけど、「飲ませる」「食べさせる」行為を母性愛の表れ的とする記述をよく見たけど、研究者の思いや育児に関する思想が事実以上に投影されているような感じがして、私は抵抗を感じた。食行動を通じて、母子の間に情緒的な相互作用が生じているのはあるだろうと思うし、研究者の思惟がない研究や記述はないと思うけど、それにしても読者が納得できるような裏づけの記述や提示が弱かったと思う。

離乳の食文化―アジア10か国からの調査報告

離乳の食文化―アジア10か国からの調査報告

*1:私は乳幼児にはタブーだと思っていたよ。

*2:「離乳食の国際比較」がどの種の学問にカテゴライズされるのかわからん。