人類遺産

 見たくて見たくて仕方なくて、やっと見られた映画。予告編では音楽があったし、映画のキャッチコピーは「そうして、人類の時代は終わりました」だから、結構センチメンタルな演出をされているかと予想していたのだが、本編は音楽無しだった。建物を取り巻く周囲の音だけが響いている。こういう見せ方は好きだけど、どういうわけか感傷的に見えるのだった。同じBGMを使わないドキュメンタリー映画でも、クロード・ランズマンの映画なんかは随分抑制された作りに見えたけどなあ。単にBGMを使わなければ、感傷的に見える/見えないというものではないのだと知る。
 世界の有名廃墟が幾つも出てきたので、私も知っている場所があった*1し、日本からは軍艦島と福島が登場。軍艦島はともかく、福島のシーンには唸ってしまった。正直、地方都市の駅って現役でもあんな雰囲気だし、最初は日本の何処を映しているのかわからなかった。陳列棚から書籍が崩れ落ちている店内のシーンで、ああこれは福島だと気がついた次第。鈍いね私も……。しかし、まだ生活していた形跡が生々しく残るGEOやマックの建物群に「これを『廃墟』として映すか……」と、何とも複雑な気持ちになってしまった。自分の生活していた場所が『棄てられた場所』として映し出される*2のは住民的には辛いだろうなあ。軍艦島出身者の坂本さんの気持ちが実感としてわかったような気がする。
 廃墟を実際に訪れた時の高揚感は薄く、あちこちの場面で無意識に寝ていた。チラシで取り上げられていた教会跡とか、いつ出てきたのか記憶にない。これ、DVDが出たら持っておきたいなあ。家で酒飲みながらダラダラ見て、そのまま寝たい。

*1:冒頭と最後のブルガリアのBuzludzha会議場とか。夏季と冬季の姿が対比に使われていた。

*2:しかも住民の意思とは関係なく『棄てられた場所』になったところだし。