一目惚れ

 開演前に店内をぶらぶらしていて、陶器の置物に目が止まった。つがいの羊、蛙、金魚といるのだけど、どれも今にも話しかけてきそうな、何とも言えない表情をしていて思わず見入ってしまう。これを迎え入れたなら、私はありあわせの物を使って、これのために小さな箱庭を作るだろう。今の季節なら蛙がいい。夏になったら金魚に替えて……春と秋は思いつかないけど、冬はつがいの羊を置くだろう。蛙と金魚は青い午前中の光に、羊は夕方の西日によく映えるだろう。
 電光石火の如くイメージの火花が脳内に散り、どうしてもこれらを連れ帰りたくなる。しかし、売り物かどうかも怪しく*1、恐る恐る訊ねると、いずれも売り物で、蛙は20000円とのこと。ウーム……。ちょっと背伸びすれば手が届く価格設定、悩むなあオイ。これらは渡邊亜紗子さんという陶芸家の作品なんだそうで、買うならお早めにと店員から背中を押される。うん……その通りだとは思うんだけど、どうやってお金を工面したものか困る。20000円使ったらそれだけで来月のお小遣いはスッカラカンだ。来月はlillies and remainsの東京公演に行きたいのに、それを我慢して突っ込めるか? 1ヶ月小遣いゼロでやっていけるか? 無理だ。ああ金が足りない!! 金が欲しい!!
 久しぶりに「稼ぐぞ、ウォー!!」みたいな気分に。しかしかつてのように日雇いの稼ぎ先を持たない今、稼ぐ当てもない。

*1:値札がついていなかった