dip at ギャラリーsoap(小倉)

 限定60名のこのライヴ、椅子がフロアにびっちりと並べられていた。40席くらい? ほぼ満席、立見も出る。ヤマジが随分痩せて、見映えがするようになっていた(というか、太る前の姿に戻ったというか……)。あと、前歯が3本くらい無いようで、以前からこうだったかどうだか少し考えるがわからず。前歯なんてあまり注意して見てこなかったもんなあ。ナガタッチは少し太ったようだがあまり変わらず、ナカニシさんが加藤鷹に激似で若干引いたり感嘆したり。
 SEで流れていたフレーズに演奏を重ねて「hasty」で開演。HOWLからの曲が中心で、静動の切り替えが印象的。演奏のテンションも高く、バンドがしまっていて良い感じ。去年「波のあるバンドだから、調子の良いうちに観ておかないと!」と、大阪までdipを観に遠征したけど、調子は全然落ちていない様子。曲自体はどこか既視感のある感じなんだけど*1、バンドの演奏がタイトだし、ギターのキレが良いのでリフが胸に刺さって、滅茶苦茶気持ちが良い。一方で、ミニマリズムっぽい曲はロックくずれなアレンジになっている。これはナガタッチの影響かな。
 「soapの高原によると、dipが福岡に来るのは13年ぶりらしいです」と「13階段の荒野」。音が太くてギターのキレが良い今のバンドの演奏と、TOWERSの曲は無茶苦茶相性が良い。「garden」はオリジナルのアレンジで聴けて良かった*2。アンコール1回終わって引っ込むが、拍手は鳴り止まない。2回目のアンコールはジャズマスターを別のギターに持ち替えたところで、ナガタッチがボソッと「このテレキャスター、100万円」。するとヤマジ「バラしちゃ駄目だよ……」。そうかあ、これがテレキャスターか。100万円のテレキャスターでおもむろに「sludge」。うん、スラッヂが来ないと終わりって感じがしない。テレキャスターは何だかチャリチャリした高音で、結構音の質感が違う物なのだなと知る。イントロのドラムのアレンジが変わっていた。途中サンハウスの「ビールスカプセル」を挟んで再び「sludge」に戻るという地方公演ぽいサービスも。随分気の利いたことをできるようになったなあ。最後はsoapの高原さんを加えて「come out」! 歌うナカニシさんを初めて観た! 高原さんは「100万円のテレキャスターぞ〜」とフロアから冷やかされてた*3
 本編〜アンコール2回の演奏で満腹、最後のアンコールで面白がらされて。終演後は身体中に満足感が行き渡ったような感じで、思わず大きく伸びをした。最後、誰かが「また小倉に来てやー」と声をかけていたけど、そう、また来て欲しい。きっと、必ず。

se.stone (山口冨士夫)
01.stone (山口冨士夫)
02.hasty
03.telvet
04.cyan
05.mole soul
06.saturnine
07.stars,stars,stars
08.spider in my hair
09.13階段への荒野
10.off the sun
11.siamese fins
12.lilac accordion
13.faster,faster
14.fly by wire
encore01
15.garden
16.no man break
17.superlovers in the sun
encore02
18.sludge 〜 ビールスカプセル(サンハウス) 〜 sludge
 ヤマジカズヒデ(g,vo)
 ナガタヤスシ(b)
 ナカニシノリユキ(dr)
encore03
19.come out
 ナカニシノリユキ(vo)
 タカハラコウスケ(g)
 ナガタヤスシ(b)
 ヤマジカズヒデ(dr)

(今日の散歩はきりがない・10/6の記事)

両さんdipと私

 「こちら亀有公園前派出所」の読者が凄く謎だった。両さんが警官である必然性は最早ないし、おもちゃやミリタリー、趣味の話とおっぱい大きい美女が出てくるワンパターンなこの漫画の一体どこに魅力を感じるのだろう。この漫画が好きだという人に尋ねても、「つい読んじゃうんですよ」としか説明してくれないし。
 ここ数年、dipは私にとって両さんみたいな位置づけになっていた。とりあえずチェックはしているし、新譜が出たら買うけど、かつてのようなときめきは感じない。色々あったバンドだし、もう元気に演奏していてくれればそれだけで充分と思っていた。しかし今またこうして胸を破られる(体感異常を引き起こすような)演奏をしている。一時期は死に体だとすら思えたバンドが、今またこうして目の前で脂の乗ったたくましい演奏をしている。しかも90年代の下北沢や渋谷じゃなくて、2013年の小倉で!
 バンドというものは1つの生き物で、必ず終わりが来るものだと思っていた。でも、dipはしぶとく生き延びて、さらにバンドは成長している。こんな日が来るとは思わなかった。やっぱりバンドはいいなあ、生きていたらこういう姿を見られる時も来るんだなあ。何度も胸が熱くなってしまって、私もdipも生きてて良かったなあと繰り返し思った*4

*1:「Miffy」っぽいなあとか、Dinosaur Jr.みたい、teenage funclubみたいとか……

*2:正直「庭なんです」アレンジは死ぬほどダサくて嫌いだった。

*3:まあ、私も内心思った。

*4:最後のアンコールでナカニシさんは「気にするな 大したことでもない」と歌っていた。色々あったけどそうやって飄々と、時にはスットコドッコイになりながら、ここまで生きてきたバンドの生き様をこの歌が奇しくも表したように思えた。傍から見れば随分気持ち悪い感慨だろうけど、いいのそれでも。