「サウダーヂ」at THEATER CIEMA(佐賀)

 宣伝用の1コマの写真(屋上に男2人が立っている写真)を見て、どうしても気になってたまらないので観に行った。彼らの背後に広がる街の光景に惹かれてたまらなかったのだ。

地方都市の閉塞感

 で、実際観ても街は期待通りの光景だった。シャッターの閉じた店が立ち並ぶ商店街、暗い路地裏、人気のない通り、薄汚れたビル群が広がる鳥瞰図。「この街ももう終わりだな」という独白の後*1、無言で広がる街の夜景には、東横インの青い照明が煌々と光っていた。この映画の舞台は甲府だが、私は同じ風景をあちこちで見ている。宇都宮、所沢、熊谷、千葉、木更津、館山、大牟田、甘木、久留米、飯塚、別府、そして佐賀もそう。地方都市の風景は恐ろしいほど似通っているのだなあとしみじみ思った。そして、人でごった返す綺麗なショッピングセンター。イオンの新建設予定地としてならされたばかりの土地で登場人物たち(ひ孫請けの建設業)が「仕事が来るじゃん」「地元には仕事は来ないよ」と会話するのが何とも切ないがリアルだ。この映画は他にもリアルな重さを持って迫ってくるものが多かった。働きたくても仕事がないこと、娯楽といえばパチンコ、スナック。音を立てて納豆御飯を掻き込む様子。どれも私をげんなりさせるものだが、同時に今の私の生活ではどれも物凄く現実感があって、胸をしめつけられるような思いがする。
 以前木更津キャッツアイを見た時、「主演が岡田准一なのが気に入らん! 主演は髪の根元が黒くなってる金髪で、スウェットの上下を着て、車内をゴテゴテに装飾したシャコタンの軽自動車に乗ってる冴えない奴にしたら良かったのに」と偽兄に言ったら「誰が観るのそんな映画」と言われて、なるほど誰も見たがらないか。と思ったものだが、そんな「誰が観るの」と偽兄に言われるような映画が8年経って出てきて、そして観てるよ私、としみじみ。ちなみに平日夜のCIEMAだというのに、結構人が入っていた。
 

*1:舞台が甲府であることは街中の光景からわかるのだが、「終わりだ」と言われて甲府市民は気を悪くしないんだろうか。