味覚おそるべし

 職場でぜんざいが振舞われる。一息ついていると、周囲の同僚達が、このぜんざいが如何に美味しいかを熱っぽく話していた。「ただ甘いだけじゃない」「コクがある」「後味がすっきりで、くどくない」……等々。確かに豆がたっぷりで美味しいのだが、私には頭が割れそうに甘く、食べ終わった後は必ずお茶を飲まないと気持ちが悪くなる。なので、周囲の人々の甘味閾値の高さに内心驚いた。
 私は甘党だが、福岡の甘味は甘過ぎてツライものが多い。ぜんざいは勿論、鶏卵素麺、黒棒、岩納豆。どれも甘過ぎて頭が痛くなる。あと、味噌と醤油が甘くてどうしても合わない。
 ダシがよく効いていて味付けが甘い福岡の料理はどれもとても美味しい。うどんは特に美味しい。しかし、上記の甘味ギャップに出会う時、または黒いドブドブの汁に浸かった醤油臭いうどんを無性に食べたくなる時、自分の味覚に関東の感覚を見出す。そして福岡に来てもう10年になるというのに、変わらず存在し続ける自分の関東的な嗜好にゾッとする。根本的な味覚というのは、そう簡単に変わらないものなのかもしれない。