「好きな鍋」

 好きな鍋といえば牡蠣の土手鍋。
 土手鍋は鍋の周辺に味噌を盛り、その味噌を鍋の中に少しずつ溶かしながら食べていく。その見た目や作業も楽しいし、何より味噌がうまい。鍋周辺に盛りつけた味噌は少し焦げ、香ばしくなっている。その味噌が宝。これを溶いて具材と一緒に味わえば、牡蠣の旨みと味噌の香ばしさとにしびれる。日本酒を少し飲んで舌が鍋の余韻から冷めたら、もう一回鍋をつつく。そして酒を飲む。こうして私と鍋と酒は永久機関と化してしまう。味噌の焦げた部分だけを少し取って、お酒のアテにするのもたまらない。
 明日から研修で広島に行く。先輩が「海産物の美味しいお店に行こう」と夕食を誘ってくれたので、土手鍋が置いてあることを密かに期待している。土手鍋、広島の郷土料理らしいし。