朗読者(※ネタばれしてます。)

 同輩が私に勧め、貸してくれた。映画「愛を読む人」の原作本らしい。人から借りて本を読むことの楽しさは、自分では絶対選択しないような本を読めることだと思う。
 随分久しぶりに小説を読んだのだが、途中で読めなくなることもなくさっと読めた。恋人の振る舞いに立腹したからといって、いきなりベルトで殴りつけるヒロインの粗野さが何だか気になったのだけど、ナチスで働いていたという行に辿りついて妙に納得した*1。そして、戦時下に自国民同士が加害者と被害者になったこと、その後の戦争犯罪を自国民同士で裁くことの難しさにため息が出る。文盲であることを隠したがために重い罪を着せられることになってしまったヒロインと、ヒロインのことを思って真実を裁判官に伝えるべきか葛藤する主人公には唸ったりなんだり。裁判の場面は息が詰まるけど面白い。
 ヒロインが服役中に書き言葉を獲得していったことを、主人公が知る場面は良かった。言葉を使えることの幸福さをしみじみ考えたりする。また、識字率の高い国で文盲のまま過ごすことの難しさについて、今回初めて考えたかもしれない。

朗読者 (新潮文庫)

朗読者 (新潮文庫)

*1:無学で粗野な人が多かったと聞くので。