ミッシェル・ガン・エレファント“THEE MOVIE”―LAST HEAVEN 031011― at THEATER ciema(佐賀)

 というわけで、木の芽時の落ち着かなさに誘われて、ミッシェルの解散コンサートの模様を収めた映画を観に行った。本編上映前の予告編*1を見ているうち、何故これを観に来たんだろうと思わず考え込んでしまった。ミッシェルのアルバムといったら「chicken zombies」しか持っていないし、ライヴに行ったこともない。2000年以降は殆ど全くフォローしてない。楽しんで観られるかしら私。不安になったが、実際始まると楽しかった。
 セットリストはベスト盤的な構成で、いやがうえにも盛り上がる。メッセに集った数千人が「get up Lucy」が始まった途端にうねり出す様は壮観。そしてあちこちで起こるダイヴ。00年代に入ってダイヴは激減したと思っていたが、ちゃんと継承されていたのか……。しかし、ミッシェルの音ってガレージとかパブロックとか、狭いハコでボコスカ演奏されるイメージがある音なのに、そんな音のバンドがアリーナやドームで演奏してたのかと思うと、痛快さと可笑しさで何だか笑いがこみ上げてくる。
 アベの死をきっかけに作られた解散コンサートの記録だが、変に感傷的な作りになることなく*2、全編ライヴの疾走感を維持した作りで、観ていて気分が良かった。デビュー当時のライヴ映像やインタビュー、「トップランナー」出演時の映像なんかが挿入されてもテンション下がることはなかった。しかし、2003年のメンバー映像の次に96年頃のメンバー映像が出てくると「若っ!」ってやっぱり思う。デビュー当時のチバが物凄い猫背で、照れてるのか何なのか、ヘラヘラ揺れながら「トライアドってとこがぁ〜」とデビュー報告してるのが可笑しかった。私はピリピリしたチバのイメージが強いので、何か物凄いギャップがあった。そして、ハコの故障でライヴ中止になった時や、モッシュが凄過ぎてしばしば演奏が中断された*3過去のライヴ映像にしんみりしたりする。色々あったのね……。そういえば、愉快犯にペットボトルぶつけられたりもしてたよな。
 解散コンサートのライヴ映像では意外に感じたことが多かったような。以下、意外に思ったこと。

  • 「リリィ」とか、売れ出す前の曲でも客の反応がワアッと盛り上がってたこと。私も好きな曲だけど。
  • キュウちゃんのドラムがパワフルだったこと。QYB*4でキュウちゃんのドラムは一度見たことがあるし、CDで聴いている分にはそんな力強い印象はなかったのだけど。
  • 客席とステージのコール&レスポンスがあったこと。ミッシェルは、客を試すように、煽るようにどんどんテンション上げて疾走して行くバンドというイメージがあったのだけど、マイク向けたり、ちゃんと客席に働きかけてたのだな。

 「ブギー」の次の次の曲だったか、ベースで始まって、そこにギターが対抗してきて……という始まりの曲が格好良かった。そして、ライヴ中のアベの顔(特に後半以降)が、張り付いたみたいに全く動かないのが気になって気になって仕方なかった。この人いつもこうだったのか? 最早確認のしようがないので、今までライヴを観たことがないのをちょっと後悔したりする。しかし、アベが最早この世にいないことが頭ではわかっていても、エンドロールで「アベフトシに捧げます」の字を見ても、相変わらず死の実感はまるで湧かなかった。もうずっとこのまま行くんだろう、私は。
 「アンヴィル!」を観た時も思ったものだけど、やっぱりバンドはいいなあ。バンドの命は有限で、必ず終わりはやって来る。また命を吹き返す時もあるけど、今・この瞬間と同じ姿を次もまた見られるとは限らない。私自身がバンドに対してロマンを抱き過ぎているきらいもあるけれど、それでもこのライヴの記録からはバンドというものの美しさや切なさをしみじみ感じたのでありました。

Chicken Zombies

Chicken Zombies

Anvil: The Story of Anvil [DVD] [Import]

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 もうDVDが出ていた。早いなあ。

*1:ボーイズ・オン・ザ・ラン」でyou演ずるソープ嬢の穏やかなツッコミに思わず吹いた。

*2:冒頭と最後のモノローグは正直要らんと思ったが。しかも何故村上淳

*3:制止するスタッフをアベが振り払っているのが遠目にわかってちょっと面白かった。

*4:ヤマジとのユニット。