脇山温泉

 うとうとと眠っていると、生暖かい大きな何かが触れた。それをかき抱いてうとうとと眠っていて、ふと、(私が抱きついているこれはなんだ?)と思った。
 目を開けると、それは誰かの脚だった。ギャーッ! 誰あんた! っていうかここどこ!? で、何で私浴衣着てるの!?
 見知らぬ人と一緒の部屋を、(もう帰らないつもりで)そっと抜け出してふらふら歩き回るうちに、ここは脇山温泉という湯治場であり、私が寝ていた宿はこの温泉で最大の長期滞在者用宿泊施設だったことを知る。
 歩き回るうち、特定の呼吸のリズムの時は自分が空を飛べることに気がつき、少し空を飛んでみる。迷い込んだ中に、木造の高層建築(廃屋)が並んでいるエリアがあった。見た様子では、昔の湯治客用の宿泊施設っぽい。細い路地を挟んで両側に延々と建物が続いているため、昼間なのに薄暗く、湿度が高くてひんやりとしている。宙に浮いているので高層階も間近で見ることが出来、大変楽しい。窓の桟の意匠など細部までいちいち細かい装飾がしてあったり、長い年月の間に進んだ腐蝕が独特の様相を見せていたりして、見ていて全く飽きない。
 光の差す方目指して廃屋の高層建築の間を抜けると、風光明媚な湖に出た。山々のほとりにある湖、天気は快晴で非常に気持ち良い。私は宙に浮いたまま、しばらく散策した。昔空を飛ぶ時はもっと苦労した覚えがあるが、今は息を止めてなくても宙に受けるのだから楽になったものだ、等考えて。しかし、呼吸が乱れると途端に落ちそうになるので気楽さは全くない。
 あーしかし、どうやって家まで帰ればいいのかな、持ち合わせないし。と悩んでいたら、たまたま出会った見知らぬ女の子に「そのまま飛んで帰ればいいんじゃない?」と言われる。そうかその手があったか!と膝を打つも、飛んでも全然スピード出ないからなー、歩くのとあんまり変わらないもんなー。と再び悩み始めたところで目が覚めた。
 久しぶりに詳細な夢を見たが、やはり疲れますね。