Duo Dialogues at ボニータ(福岡・薬院)

 ドグラマグラのバイオリン谷本さんと、ベースフクヤマワタルさんのユニット(ユニット?)、Duo Dialogues。一度観てみたいと思いつつ、平日開催・北九州開催が多く、なかなか行けずにいた。しかし昨年ごろからちらほら福岡開催が増えてきて、今回めでたく観に行ける運びとなる。フジロックエゾロック豊田道倫新宿シアターPooライヴと並んで一度は行きたいライヴの1つに行けることになり嬉しかった。

ボニータというところ

 開演が21時と遅かったので油断していたら、開演時刻ぎりぎりに薬院に着く羽目に陥る。よく知らない土地だし、道に迷っている余裕はないのでお店に電話して道を聞いたら、なんとマスターが迎えに出てきてくれた。……予想外の丁寧な対応に恐縮しまくり。開演前の忙しい時間帯に申し訳ない。しかし入ってみると、私が最初の客だった。昨年が盛況だったと聞いていたので混雑を覚悟していたのだけど、うん?
 客がもう少し来るまで開演時刻を遅らせるというので、ゆっくりお店を観察。小腹が空いていたので、ついでに食事も摂ることにする。
お店は外観も独特だったが、中はもっとユニークだった。様々な物がみっちりと詰まって、店内を占領している。店の入り口付近の保冷庫は人形や謎の物体が詰まっていて、本来の機能を果たしていない(電源も入ってない)。やたら大量のデジカメ(多分)やしゃれこうべが下がっていたり、マガジンラックに入っている本は折り紙の指南本と「図鑑・太平洋戦争」*1。店内フロアの3分の1はこのような謎の物が詰まって席がない*2。こういう、物がぎっちり詰まっている場所は好きだけど、この雰囲気は客を選ぶだろうなああ。
 しかし、マスターは親切かつ人当たりが良く、辛い物が苦手なのだと言うと辛味抜きのタコスを用意してくれたり*3、今後開催予定のライヴを教えてくれたりしてくれた。……独特の店構えとマスター、という共通点で浮羽のイビサや久留米のJazz Tacoを思い出したのだが、なんかこういう文化があるんだろうか。

期せずして、秘めごとをのぞくようなことに

 開演時刻から30分ほど経過し、客が4、5人程度にまで増えたところで開演。ひそひそ話のように演奏が始まる。曲というより、本当に二人のお喋りを見ている感じ。それも、見られることを前提にしていないひっそりしたおしゃべりを見ている感じ。なるほどDialogues(対話)だなあ、と納得。この時、自分が二人に対してのぞきをしているような気分がして、見ていいんかなコレ、とちょっと落ち着かなくもあった。見て全くかまわない状況のはずなのだけど、何だか自分と関わりのない、私的な空間を観察しているような気がしてしまったというか。しかし、演奏が進むと次第にひそひそ話は音楽に聞こえてくるようになったし、客席に向かって話す谷本さんのMCでだんだん「のぞきをしているような後ろめたさ」もほぐれていった。完全にほぐれたのは、アイスクリームの歌とその後のMCの頃か。

アイスクリーム アイスクリーム 私の恋人よ
でもあんまり放っておくと お行儀が悪くなる
                              (アイスクリームの歌)

 シンプルだけど艶っぽくて、あまり大っぴらには人前で歌えない感じの歌だよなあ。と思っていたら、「10歳くらいの子が歌っているのを見ると『いいんかなー』という気がするんですよねえ」というMCを聞いて、同意&笑う。何とも言えない、モヤ〜ッとした気持ちになりますねソレ。以前子ども落語を見ていた時、これまた10歳かそこらの子ども噺家が「あとは二階でしっぽり」と言っているのを聞いて、「意味わかってっかああ?」と問いただしたいような気持ちになった時のことなどを思い出してしまった。
  先日のドグラマグラライヴで聴いた曲をこのライヴでもちらほら聴いた。先日のドグラマグラライヴで印象的だった曲は「ghost」という名前だと知ることができたのは嬉しかったな。好きな人がいる家に帰る時を思い出すような歌。某処のレポで見た「ふたりナーダム」も聴けた。いつもは『騎馬軍団が走り抜けていくイメージ』の「ナーダム」が、一騎の騎馬が走っていく感じ。どう聴いても騎馬の数が増えん。ははは。
 来た時から疲れて眠かったせいか「うみ」に異様なトリップ感を覚えてヤバかったりしたものの、全般的には「こういう解釈もアリなんだ!(目からウロコ!)」というよりは、「ほっこり温かい、小さなライヴ」という感じ。笛*4を吹きながらバイオリン演奏した谷本さんに*5、相方のフクヤマさんが「そんなことする人初めて見た!」と笑い出したり、「せえのっ」とフクヤマさんが小さく声をかけて音出しのタイミングを合わせたり。そのやりとりは「見せるもの」というよりは、二人のやりとりにたまたま居合わせた、という感が凄く強くて、やっぱり秘めごとをのぞいているような感がした。
 「この前*6呆けすとらで演奏した曲ですが、元はこのデュオで演奏し始めた曲で……」というMCが入った曲があったり、この前のドグラマグラライヴが「こばなし」っぽかったのは、多分このデュオからの影響が強いのだろう、と推測。このデュオは実験場のような意味合いが強いのかな? そして、今演奏者の中でブームなのかな? とちょっと思った。
 終電で帰宅。日中の仕事の中で人前で話をする機会があり、非常に緊張したせいで過覚醒気味(眠いのに全然眠れない)だったのだが、すっかり穏やかになってよく眠れた。

*1:10年ぶり位に図鑑を見たけど、凄く面白かった。

*2:その後やってきたお客さんの話によると、「去年よりも物が増えている」とのこと。つまり増殖し続けているということか。

*3:辛い部位を別に分けて「自分で好きなようにして食べて」と提供してくれて嬉しかった。そして、店の凄い雰囲気とは裏腹(←失礼?)に、タコス(特にタコス生地)も美味しかった。この様子ならピザ生地も美味しいだろうなああ。今回はあまりお腹が空いていなかったので頼まなかったが、次ここに来る機会があるならピザを頼んでみようと思う。

*4:口だけで音を変えられるため、手ぶらで演奏可能な笛。名前不明。どういう仕組みになっているのか物凄く不思議だったのだが、金管楽器のマウスピースと同じ原理なんだろうか?

*5:「同じフレーズで乗っかるならどんな楽器でも演奏参加可能」という演奏スタイルがあるそうで、そういう時は色々な楽器が入ってきてすごく楽しいらしい。それをひとりで出来る限りしてみようとしたらしい。

*6:8/19にあったイベント「真夏ノ夜ノ夢」のこと。私は観てない。