うわさの鼻洗浄

 初めて行く医院だったのだが、30年くらい前のデザインそのままの建物で、個人的には大変ツボ。中も大変素敵。黄ばんだ壁に木製の仕切り、ぶらさがる黒板、色褪せた耳の解剖図。外観からすると2階以上はかつて(今も?)入院施設ではないかと思われた。うわ、入ってみた〜い。病気嫌いなので、入らなければならないようなことになるのは絶対嫌だが。
 簡単な問診と診察を終え、処方箋を出してもらう。よっしゃ、さあ帰ろ。するとドクター「じゃ、これから鼻洗浄しますので向こうで並んで待ってて下さい」。
鼻洗浄キタ──( °∀ °)──!!
 花粉症には鼻腔内の花粉を洗い流すのが良いらしい。しかし鼻腔内に液体、といえば蘇るはプールで水を飲んだ時や鼻から牛乳の痛い思い出。師匠(not花粉症)からキラキラした目で鼻洗浄を勧められる度、人事と思って……と苦々しい気持ちで断っていたのだが、ついに鼻洗浄を避けられない事態に陥ったよおっかさん。おっかさん? ドキドキしながら渡された鼻洗浄説明書に目を通す。しかし、鼻洗浄の目的以外は「水はしょっぱいです」とか書いてあるばかりで、どのように行うのか全然わからない。鼻洗浄を受けている人が見えるのだけど、彼女は鼻に管を挿し込まれて口から水を吐いている。……偉いなあ小学生くらいなのに、黙ってあんな目に遭わされてるよ。
 いよいよ私の番。膿盆を唇の下あたりにつけて持たされ、現在鼻が詰まっていないかどうか確認された後「片方の鼻腔にこの管を挿しますので、挿してる間は『あー』と言って下さい。管を抜いたら片鼻ずつ押さえて、水を抜いて下さい」と看護師さんから指示を出される。OKっす。
「あ゛────(がぼがぼがぼ、ぶしっ、ぶしっ)」
鼻に通された管から出てくる食塩水がどんどこ口の方に降りてくるので、声を出すとちょっと嗽っぽい音がする。鼻の中にも結構水が残るので、押さえて水を抜く時は結構ムキになる。
「あ゛────(がぼがぼがぼ、ぶしっ、ぶしっ)あ゛────(がぼがぼがぼ、ぶしっ、ぶしっ)あ゛──── ……」
 見ている分にはそんなに時間がかからないようだったが、いざ自分の番になると涙も滲むし結構長い。そして、何だかちょっと気持ち良いような気もする。出てきた物を見るのも楽しい。副鼻腔炎の時にこれやってみたい。
 終了後、看護師さんから「鼻洗浄後は鼻の中に残った水が出てくることがあります」と注意されていたのだが、特に出てくることもなく。しかし、夜になって寝ようと横たわった途端にだらだらだら、という感じで水が出てきたのでうろたえた。拭いても横になるとだらだら出てくること3回。鼻洗浄を受けてから4時間近く経っていたのに吸収されたりしないのか……。鼻づまり感は特になかったのに水がたまっていたことの不思議と、顔の中には知らない袋があるのだな、とちょっと感心した。