悪魔とダニエル・ジョンストン
レイトショー期間が一週間しかないってんで、今日あわてて観てきた。躁うつ病のシンガー、ダニエル・ジョンストンのドキュメンタリー。あるシンガーの半生とある精神障害者の一ケースという2つの側面があったと思う。
初めて生々しい躁エピソードを見たのだけど、如何に躁が周囲に迷惑なものかしみじみ思い知る。クリスマスツリーにビートルズのレコードを飾り、止めるきょうだいに怒って暴力(きょうだいはアバラを折った)。小型飛行機を墜落させたり、彼のために心から奔走してくれるスタッフをクビにしたり、その他エトセトラエトセトラ、常軌を逸した行動がいつまでも続く。病院に入っても薬物の調整がうまくいかなかったらしく「一小節も音楽が浮かばないんだ」と語る場面の辛さや、「投薬を止める方が音楽は冴える」とコンサートの前に服薬を止めてしまうエピソードなど、病気を治療し楽にしてくれるはずのものにも苦しむダニエルの姿に、何が援助なのか?と考えてしまい仕事の色々が思い出され、観ているだけの私もグッタリ……*1。映画の最後の方で、ダニエルが「パパがいなければ何もできない」と話したという場面があるのだが、それは病気に散々苦しめられ、今も病気と闘っている人の言葉らしい重みを感じた。
一方で、音楽は物凄くやさしい。テープで今も聞けるらしい初期音源は繊細なナイーヴさと素朴な美しいメロディが溢れていて、ココロわし掴まれる。以前、くるり岸田がジム・オルークを評して「女の子のおっぱい揉んだことないような音」と言っていたが、その比喩がまんまこの人にもあてはまるような感じ。
あと、現在の彼は物凄く太って、腹がぱんぱんに出っ張っているのだけど、あんなに出っ張った腹を久しく見ていないせいか何なのか、腹をつついてみたり抱えてみたりしたくなって困りました。ああいう腹って、中に何が入っているんだろう……。自分と違うつくりのものはつくづく不思議だ。