風の城砦(カスバ) ※ネタバレ注意。

 際だつ美しい碧眼を特徴に持つ、伯爵家一族の物語。前半は砂漠で行方不明になった伯爵家令嬢の消息と主要人物達の出生の秘密、後半は伯爵家の女性達につきまとう呪いについてが話の中心となる。
 話の導入は面白かった。帝国主義時代のフランスとアルジェリアという設定も好みだ。この人の漫画を読むのも既に4作目なので、当初気になった絵柄のクセ*1にも慣れた。確か劣性遺伝であるはずの碧眼が、黒人と白人のハーフに現れたのかは釈然としないが、些末なこととして目をつぶろう。
 しかし、結末がどうにもこうにも、「なんじゃそりゃああ!?」と言いたくなる感じ。ストーリー前半で伯父さんが「命をかけて守ってやる」と誓ったうちの一人は手術が失敗して死ぬ。そんなあっさりした死に方あり? しかも回想シーンで登場と添え物エピソード扱いだ。更にヒロインのいとこはほとんど前フリなくヒロインの乗った船を爆破する。青天の霹靂で、思わずページを見直してしまった。「直前までヒロインと快活に談笑していたのに? しかもヨーロッパ人に対して根深い憎悪がある感じでもなかったし、『自分を差別するヨーロッパ人もいるが、ヒロインは違う』とか言ってたのに? ヒロインはいとこが希望する道を歩めるように惜しみない援助をしていたのに?」とかもう納得いかないことづくめ。後に続く外伝では、いとこの行った非道の本当の理由は「ヒロインへの横恋慕」って、あんまりだ。結末にもう少し納得のできる伏線を入れておいて欲しかった。2時間以上かけて読んだのに、なんか時間返せ的気分に。

*1:目の横幅が広いせいなのか顎が細いせいなのか、物凄く顔がひきつって(歪んで)見えることがある。

 はみだしっ子シリーズ5 奴らが消えた夜

 良かったねマックス……良かったねグレアム……と、ありえないくらいぐわぐわ泣いて読む。もう何度も読んでるんだが、今回読んでようやくグレアムの「転覆した船のたとえ」が理解できた。遅いよ自分。
 13巻まであるはみだしっ子シリーズだが、今のところ私が好きなのは9巻くらいまでで、10巻以降(「つれていって」シリーズ)になると1コマの台詞が多過ぎて読むのがしんどい。ストーリーも長いしなかなか進展しないし、グレアムの閉塞感がしんどいし。
 あと最近になって話全体の流れ、特に「つれていって」の筋がようやく見えるようになってきた。謎解きしながら読んでいるような感じ。

はみだしっ子 5 (花とゆめCOMICS)

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