裂目の暗い穴

 手の指の爪と肉の間には、爪と肉の「つなぎ」とでもいうべき部位がある。爪というには柔らかく、肉というには硬い。この部位は時々肉から離れてしまう。そのままにしておくとストッキングなどを履く時に引っ掛かるし、乱暴に剥がすと肉にしっかりついているところまで剥がしてしまい出血したりするので注意が必要。で、私は割とよくこれが剥がれる。
 今日もこのつなぎが剥がれかかっていることに気がつき、用心深くこれを剥がすと、指先の肉と爪の間にかなり大きな裂目があいた。裂目は深くて、中は真っ暗だった。痛みと出血は全くなかった。こんなに深い傷なのに痛みも血も出なくてラッキー、でもどうなってんのかな私の指先。裂目から見える指先の中は、ちょっと怖いような暗さなんだけど。

ライヴと音響難聴と耳栓

 中学生の頃、ライヴに行った後で猛烈な耳鳴りに数ヶ月悩まされたことがある。ピュイーという高音の耳鳴りがいつまでも止まないのは辛く、このままこれは治らないんじゃないかと多感な中学生は不安に苦しんだのでありました。
 今も耳鳴りは残っているが、それほどひどくはなくて、疲れた時に強まる程度。その後、爆音に曝された結果生じる音響難聴*1というものを知り、「耳は消耗品」という言葉を聞いてから、耳の保護を真剣に考えるようになった。
 しかし、普通の耳栓をすると音の聞こえが明らかに変わる。ある音域の音をカットしてしまうためにこのような事態が生じるらしい。んーしかし背に腹は変えられぬというしな、と思っていたら、「音量だけを減らす耳栓がある」と風の噂に聞く。早速購入を試みたものの、AmazonでもYahoo!でも楽天でも取り扱いなし。仕方ないので年末年始に上京した時に買うことにしたのだが、まー東京なら大概何処ででも手に入るでしょ、と思った私が甘かった。マニアックな商品の総合デパート・東急ハンズに取り扱いなく、仕方なく楽器店行脚をする羽目に陥るわたくし。楽器店で「耳栓ありませんか?」と訊くのは凄く恥ずかしいし*2、あっても普通の耳栓しかないし。結局、新宿東口にあるROCK INNのドラム専門フロアでようやく発見。見つけた時は凄く嬉しかった。あと、ドラム専門フロアはギラギラに金光りしていて*3、ちょっとした異空間だった。
 待望の耳栓の姿はこんなん。

 耳栓というよりマカロニっぽい。ちょっとあんた大丈夫? と訊きたくなるような頼りない佇まい。「12dbカットします」と書いてあるが、12dbがどのくらいの音量なんだかさっぱりわからないし、こんなんで耳栓としてちゃんと機能するのかかなり不安だった。
 で、先日のライヴの際に早速使ってみたのです。そしたら、おお、と思わず唸るほど音の聞こえ方が違う。耳栓を使うとこもったような聞こえ方になるのだが、この耳栓は普段の聞こえ方と大差ない。
 帰宅してからの耳鳴りの出方が肝心だと思っていたのだが、特に耳鳴りもライヴに行く前の状態と変わらず。あんな頼りなげな佇まいなのに、割と良かったみたいです。こんな道具があるんだなーと感心することしきり。人類の英知はすごい。

*1:私は「ディスコ難聴」という言葉で知った。

*2:音を楽しむ道具を売ってる店で、音を聞こえないようにする道具を買い求める行為が、何だか矛盾しているような、失礼なことをしているような気がしたのだ。

*3:主にシンバル類が。