きちんとならべ

 電車をホームで待つ際の並び方に、整列乗車というのがある。整列乗車とは、電車の乗車口の停止位置に2〜3列に並んで電車を待つこと。標準的な整列乗車の例えを図1に示す。黒円は人、灰色の点線は「白線の内側にお下がり下さい」の白線、黄色の太線は点字ブロック、黒の細線はホームの端である。
(図1.標準的な整列乗車の例)
 ところが、福岡、それも福岡市内から少し離れると整列乗車は未だ十分認知されていないのか、不完全な整列乗車がしばしば見られる。不完全な整列乗車は、そもそもの出発点からどうかしている場合が多い。
(図2.出発点からどうかしている整列)
整列乗車では同じ順番の人は同位置に横並びにならなければならない。しかしこの場合は緑の人が黒の人よりも一歩下がったところで並んでいる。こういうケースの場合、一歩下がっている緑の人は、黒の人より後に並んだ場合が多い。すなわち、「整列乗車だから同位置に並ばなければいけないけど、私は後から来たから、同じ位置に並ぶのはためらわれるわ」くらいの奥ゆかしい気持ちが作用した結果の行為であると考えられるのである。
 出発点で「整列」が不完全なものになると、その後の整列は混迷していく。

(図3・4.その後の経過)
もうこうなってくると、整列乗車かなんだかよくわからなくなってくる。後から来た人ほど、どう並んだら良いのかわからない。そして、このような不完全な整列乗車は、いざ電車が来た時列として非常に脆弱である(図5)。オレンジ横線は電車、縦線は電車の乗降口を示す。
(図5.電車が停車した場合に生じる変化)
 奥ゆかしかった緑の人が、隣の列の隙間に入り込んだりしてしまうのである。先導を失った列はあっという間に壊滅し、図のように何となく横並びを維持してみたり、後ろの人が前に詰めてきたり*1、残っている列の後ろに並んでみたりでワケがわからない。もうこれでは整列乗車する意味はないんじゃ? という気さえする。私は声を大にして言いたい。二番目に並ぶアナタ、整列乗車にためらいは不要です! 同位置にガンガン並べ!!*2



 で、私は美しい整列乗車を普及すべく、二番目に並ぶことになった際は一番目の人が並んでいる横位置にピッタリつけるようにしている。今日も二番目に並ぶことになったので、隣の人(男性・推定70代:以下じいさん)にピタッとつけて並ぶ。するとじいさんが少し前に出た。これでは図2の格好になってしまい二列形成が難しくなるかな、と思ったワタクシ、じいさんと同じ位置まで前に出てみた。すると更に前に出るじいさん。また前に出る私。また前に出るじいさん。じりじりとこのやりとりを数回繰り返した。
(図6.じいさんと私が前に出た図:じいさん;黒、私;赤)
 いつのまにやら白線はおろか点字ブロックにまで私達は飛び出していて、これではまるで、一番に乗り込める位置を巡ってじいさんと私でチキンレースをしているようだなあと思ったら可笑しくなったので止めた*3
 

 

*1:多分整列乗車の目的の一つとなっているであろう「割り込み乗車を避ける」は台無し。

*2:鉄道会社も整列乗車を推進したいなら、整列乗車がしやすい環境を整えるべきだ。乗車口マークの横幅を広くする(隣に人が立っても気にならない程度の幅が開けられるようにする)だけでも相当違うと思う。

*3:この後、じいさんは急いで電車に乗り込んだのだが、いかにも彼が座りたそうに席を見回しているのに、誰もまるで彼に無関心で、席を譲る人はいなかった。じいさんが何だか物凄く気の毒で、嫌なもの見たなあと思ってしまった。譲ってやれよう。