「女の子は本当にピンクが好きなのか」堀越 英美

  姪Aはピンクが大好き。ピンクの安心タオルを握り、着ている服も上下ピンク、キティちゃん&ピューロランドが大好きで、コロナ前に帰省した時は、ピューロランドのテーマソング?を歌いながら部屋の中を飛び跳ねていた。プリンセスも大好きで、毎年スタジオアリスでドレスを着て写真を撮るのを楽しみにしている。母(私の妹)の意向で髪をベリーショートにされ、乳歯から生え変わり途中のすきっ歯で、プリンセスとか言われてもな。と思わんことも無い。しかし私自身はこの手の楽しみを早々に諦めてしまった子どもだったので、可愛いものやドレスを心から楽しめる姪Aを慈愛の眼差しで見ている。 姪ができてから子ども向けの衣料や玩具コーナーに注意を向ける機会が増えた。女児向けと言われるものはどうしてこんなにピンク、あるいはパステルカラーに溢れているのか謎だった。何故どれもこれも同じような淡い色合いなのか。「フワフワかわいい」が過剰で、暴力的にさえ感じる。「女児がピンクを好む」とは、社会的な抑圧の結果なんだろうか。でも、生得的な嗜好がありそうな気もするんだよな。というわけで読んでみたこの本。サクサクと軽い読み応えだった。社会学とかジェンダー関連の本かと思ったら、その道の専門家が書いた本ではなかったらしい。

 女児がピンク(パステルカラー)を好む生得的な規定はどうもありそう、という話がうっすら紹介されていた。面白かったのは、「ピンク」という色の扱われ方の変遷。フランス・ロココ時代には男性がまとう色として活躍していたらしい。花の刺繍が入ったピンクのジャケット……考えるだけで華やかな代物だ。ピンクが女性を規定する色になったのは1950年代のアメリカから。そして反動のウーマン・リブ闘争がやってきて、また盛り返しがあって、云々。しかし「愛と家庭の象徴・ピンク」という扱われ方から、「色はピンクだけど、中身のコンテンツは男女共通」の時代へ変わっているらしい。女児の好きな色、そして物語を好む嗜好を踏まえた実験玩具*1が出ているんだとか。バービーも理想的肉体の提示が女児の自尊感情を損なうという知見から、普通体型や様々な肌の色のバービーが出ているそうな。

 子どもの好奇心を伸ばし、自尊感情を損なわず楽しく遊べるように玩具が進化しているという話は随分救いになった。そういう玩具を姪達には渡したい伯母さんなのだった。多分姪じゃなくても、誰かの子どもに玩具をプレゼントするとしたら、そういう玩具を選ぶと思う。いつの間にか私も後継の女の子達の未来を考えるようになった。

女の子は本当にピンクが好きなのか (河出文庫)

女の子は本当にピンクが好きなのか (河出文庫)

  • 作者:堀越英美
  • 発売日: 2019/10/05
  • メディア: 文庫
 

  面白かったんだけど、この本は参考文献のリストがない。一般書だから仕方がないんだろうけど、そこが大変惜しい。

*1:ストーリー上の難問を科学的手法で解決する構成になっているらしい。