邂逅

 sugareeさんがはてなに復帰していたことに偶然気づいた。慌てて確認すると、今年から記事の更新が行われていた。全然気づかなかった!  これからどうしたものか、ちょっとウロウロ思案している。以前お会いした時の借り*1をお返ししたいのだけど、さてどうしたものか。

 そしてはてなブログは、ブログのブックマークのことを「購読」と呼ぶのは止めた方が良いと思う。読者になるとお金を払わなきゃならないのかと思ったわ。

*1:このことを思い出すと、自分のあまりのだらしなさに頭を抱えたくなる。しかも以前お会いした時というのが既に11年前という……。

ヒグチユウコ展「CIRCUS」 at 奥田玄宋・小由女美術館

 実家周辺に被害なしということで、トレッタ三次まで野菜を買いに行った。フラフラしていたら、この展覧会のポスターが目に留まり、一目で気に入る。絶対私が好きなタイプだ! ということで、飛び込みで入った。

 全然知らなかったのだが、グッチや資生堂ともコラボしており、何だか物凄く人気のある画家さんらしい。こんな僻地の美術館なのに「来場者一万人突破!」と看板が出ている。会場周辺に設置された撮影コーナーでは、大人も子どもも写真を撮っていた。博物誌を思わせる緻密な線画、ヒエロニムス・ボスを思わせる*1、グロテスクでユーモラスなキャラクター達。全般的にグロ可愛くて、耽美な画風。うん、やっぱり自分の好みのタイプだったわ。凝視していると絵の世界に吸い込まれていくような、久しぶりに現実以外の世界に入り込んでいるような気分で実に楽しい。立体もアレコレ作りこまれていて可愛かったが、私は絵の方が好きだった。あと、何というか「わかりやすい」展覧会だった。これらの作品のバックにあるものが予想できて安心して楽しめるというか。今はこういうのが良いのかなあ。

 1時間半くらい滞在して、ロビーに戻ってきたら11時過ぎ。なんだか結構混んでた。そして、物販で扱っていた「きのこ会議」のTシャツが個人的に大ヒットする*2。これ、すっげー可愛い! 着る、私絶対着る!! どのサイズも丈が全部長めなので、使い勝手も良さそう。野菜を買いに来たこともすっかり忘れ、結構大盤振る舞いして帰路。野菜は何も買わなかった*3。お買い物あるあるですな。帰る道々、最近Tシャツが似合わなくなっていること*4や、トーンの暗いベージュの服を着ると凄く年寄りくさく見えることを思い出し、どんどん気分が暗くなってくる。でもいい! 着る! Tシャツ着て老けて見えるなら、首周りに明るいスカーフ巻いてやるわい。ジーンズで若作りっぽくなるなら、別のボトムスと組み合わせてやるわい。どうにかなるわい! そして帰宅して早速試着し、前後を交互に見て満足。やっぱり買って良かった。

奥田玄宋・小由女美術館というところ

 奥田玄宋さんが三次出身ということで、地元名士の記念館的意味合いの美術館なんだろう。彼の展示(常設展)は、時期に合わせて紅葉を描いた絵の展示が中心で、物凄く赤が綺麗だった。赤ってこんなに色々な色があるんだよなあとしみじみする。が、特別展と常設展の関連性が全然見えない。次回の特別展は安西水丸だし、次はキスリングらしい。キスリングはともかく、ヒグチユウコと安西水丸はなあ。でも、それで良いのだと思う。美術館本体と関連のある展示しか行わないなら、こんな僻地の小さな美術館はあっという間に行き詰ってしまう。地方で文化施設を運営することは非常に難しい。ましてや三次は地の利がとても悪いので、更に不利だろう。是非特別展でガンガン稼いで、美術館を存続していただきたい。考えてみれば三次、こんな僻地なのに美術館も風土記の丘も、(開設当初から赤字確実と見なされてきた)もののけミュージアムもあって、随分文化方面に攻める御土地柄だよなあ。市の財政は絶対良くないだろうに。今住んでいるところは、人口は増加しているんだけど美術館は全然機能していない文化不毛の地*5なので、正直羨ましい。三次には意欲的なキュレーターがいるんだろうな。定期的にチェックしようと思う。あと(潰れないうちに)早くもののけミュージアムにも行こう。

*1:実際、ヒエロニムス・ボス(とブリューゲル)の絵をカバーした画集を出してた。

BABEL Higuchi Yuko Artworks 通常版

BABEL Higuchi Yuko Artworks 通常版

 

 

*2:夢野久作原作の「きのこ会議」に彼女が挿絵をつけたもの。この短編はオチも最高だった。

*3:「煮沢庵にぎり」という、さいの目に切った沢庵が混ぜ込んであるおにぎりだけ買った。「肉体労働している時に食べると凄く美味しい」という感じの味だった。

*4:TシャツとGパンでいると、「若作りした痛々しい人」みたいになる。

*5:特別展は一年前の情報から更新されておらず、なんか地元の学校の絵画を集めた展覧会とかやってるようだった。

関東に巨大台風襲来

台風19号 非常に強い勢力で直撃か 昨年21号匹敵気象庁

台風19号は「非常に強い」勢力で12日(土)午後に東海や関東に上陸の恐れ。関西空港が浸水した昨年の台風21号に匹敵する勢力です。

(中略)

今回の台風19号が危険な理由は「非常に強い」勢力で上陸するということだけではありません。ほかにも「暴風域が大きい」ため、広い範囲で、半日程度と長い時間、暴風が吹き荒れる恐れがあります。瞬間的には50メートル以上の猛烈な風が吹く可能性もあります。また、台風を取り巻く活発な「雨雲が大きい」ことも危険な理由です。半日以上と長い時間、強い雨が降り続く見込みです。湿った空気の影響で台風の接近前から雨が降り、総雨量がかなり多くなるでしょう。(後略) 

  台風の進路は関東直撃。先月の台風の被害からまだ回復途上にある実家周辺、および実家はどうなることかとても心配だった。どうしたものかな、と思っていると、母から「国産のブルーシートと養生テープを買って下さい」とメール。買ったところで(配送業者が動けず)送れないなら届かない。どうするのか訊くと「遅れても、高速道路が動いたら届くから」とのこと。いや、その高速道路がどうなるかわからないじゃん。

 もう今から送っても明後日に届かないことは確実なので、道路の被害が少ないようだったら楽天から送り、道路被害が大きいようだったら直接私が乗り込んで持っていこうと思っていた。

 台風が通り過ぎた13日の早朝6時、母からメールが来た。

「家も人も無傷です。ブルーシートいりません」

……あ、あぶないところだった。1-2万円分くらいブルーシート買うところ*1だったよ。

*1:屋根の雨漏り対策に使うシートは、厚さ3000番台以上、大きさ5m以上、ハトメがついていることが必要らしい。一番小さいものでも1枚2000円くらいするのだ。

バットマン ダークナイト ※ネタバレしてます

 映画「ジョーカー」の鑑賞に向けた予習第二弾。三部作の中でも最も評判の高い「ダークナイト」である。ここでようやくジョーカー登場である。いよっ、待ってました! この映画の封切り直後に、ジョーカー役のヒース・レジャーが薬物中毒で亡くなっており、ジョーカーを演じることで生じた苦悩が影響したという話もあったくらいなので、どれだけ悪いのかとわくわくしていた。

  • 脚本が手が込んでる。ちょっとした台詞がここの伏線になっていたのか!と感心することが何度か。
  • ジョーカーは、言葉を交わすと心を操られる「羊たちの沈黙」第一作のレクター博士系なのね。個人的にはあからさまに憎悪や怒りを煽るジョーカーよりも『ヌルリと心に入り込んでくる』物腰の柔らかいレクター博士の方が怖い。
  • 不殺の信念を貫くバットマンに救われ「おまえは本当に頑固な奴だな……」と呟くジョーカーに、新展開の萌芽を見たような気がした。バットマン&ジョーカーが、トム&ジェリー的な関係になりそうというか。
  • ジョーカーの言葉に怒ったり、憎悪を燃やす登場人物達の気持ちに私はあまり共感できなかったので、「こういうことを言われると怒るのだな」と妙に客観的に見た。死者となった同僚を嬲られる警官、恋人の死はおまえの味方達の計画と失敗の結果だと唆される検事とか。
  • 検事が憎しみの権化と化すのがあまり納得いかなかった。お前なあ、バットマンは両親目の前で殺されて、思いを寄せる幼馴染は気だけ持たせておいて結局バットマンを振ってんだぞー! しかもバットマンは振られたことを知らないんだぞー! バットマンの方が余程気の毒だぞー!!(力説!)とつい思ってしまって。いやあの、バットマンの不幸を検事は知らないとはわかっているし、不幸比較をしても始まらないとはわかっているんだが、それにしても。
  • 囚人達を乗せた船と一般人を乗せた船、どちらも爆破ボタンを押さないという結果は物凄く美しいと思った。自分ならすぐさまボタンを押しちゃうけどなあ。名も知らぬ相手を互いに信じる、命を選別しない。これらを美徳とする作り手の価値観を感じた。正義の検事を「犯罪と汚職にまみれたゴッサムのヒーローだ、希望だ」とバットマンは主張したけど、ゴッサムの希望は市民の中にあると思う*1
  • 凄い技術の開発とか製品の輸出入で活躍するアジアの国々が、韓国と中国とシンガポールなのが悲しい。凄い技術の辺りは、80-90年代なら日本が出てきたんだろうけど、もうそういう位置づけにいないんだなと。

 もっと「ジョーカーは何て恐ろしくて非道な悪い奴なんだ!(こんな悪い奴になるまでの経緯はどんなだったのだろう?)」と思えることを期待していたのだけど、あまりそうならなかった。さて。

*1:しかし裏を返せば、「相互に信頼する」「罪人か否かで命を選別しない」だけでは社会正義を達成するには不十分なのだ(これらは当然の前提である)という認識が作り手側にあるとも受け取れる。前提のレベルが高いな。

セラピードッグって何だ・2

 近隣の警察犬訓練所が見学可とホームページで謳っていたので、見学に行くことにした。半年後くらいに犬を迎えたいと思っていること、しつけや不在時の預け先を検討していることなども事前に伝えた。

 約束の時間よりかなり早く着いたので、周囲を散策してみる。犬を入れるケージがびっしり詰まった車数台、何故か鳩小屋等、この訓練所の持ち物と思しきものが近くにあるが、動物の臭いが全くしない。犬の鳴き声も全くない。ここに犬いるの? と不安になるほど静まり返っている。が、呼び鈴を押した瞬間にけたたましく犬達が吠え出した。犬達と私を隔てる物はプレハブの壁一枚だったので、犬は私の気配に気づいていたんだろうけど、一切吠えなかったのだ。凄いなあ。

 年配の女性が出てきて対応してくれる。犬種は、と訊かれ、保護犬で迎えようと思っていること、サイズは中型犬以下で雑種になるだろうということを伝えると、女性のテンションが下がったのがわかった。保護犬は懐きにくい、子犬を選べ、奥でブルブル震えているようなのを同情心で引き出してはいけない、と手早く言われる。奥でブルブル震えているようなのを馴致するのは難しいから、私も貰うつもりはないです……。私達の脇にはテーブルと椅子があったが、立ち話を続ける女性。他の訓練所をやたらと紹介される。自分のところの客ではないと踏んだんだろうなあ。収穫だったのは以下の通り。

  • 同じ「警察犬訓練所」を名乗っていても、一般飼い主向け寄り・特殊技能養成寄りなど、訓練所によってカラーが異なる(ここは警察犬訓練が主体らしい)
  • JKCの会員ではあるが、JKCの活動には殆ど関わらないところもある(ここも会員だったが、JKCの出している家庭犬訓練資格(CD)のことを知らないと言っていた)

 会話は10分程度で終了。運動に出てきた数頭のシェパードとゴールデン・レトリバーを見ながら、準備した菓子折りを渡して帰路に就く。

 保護犬を迎えるというのは良い話のようだが、不動産屋も訓練所もいい顔をしない。どちらも私を「可哀そうな犬に同情して、リスクの高い選択をする人」と見なしていた。不動産屋は「保護犬活動に関わって、二頭以上犬を家に上げる」ことを懸念していたし*1、訓練所の人は気乗りしなさそうだった。戦前、洋犬(シェパード)が輸入された時にその訓練性能の高さがもてはやされたとか、和犬は訓練しても戦争に使役できるほどの訓練を入れるのは困難だったという話がある。保護犬を訓練しても、あまり訓練が入らなくて面白くないとかあるんだろうなあ。

日本犬の誕生

日本犬の誕生

 

  実家は代々「血統が何だか全然わからない」雑種を飼ってきた。性格も色々だった。今、実家で飼養されている犬は、人間の指示を理解しようとする意欲が高い犬である。この犬が誕生した経緯は「庭に迷い込んできた猟犬と、庭で飼育されていた母犬が交尾して」ということだった。ポインターかセッターを思わせるような柄の犬なので、猟犬(人との意思疎通に意欲を持つ犬)の血が入っているのが大きいのかなあ。やっぱり血は大事なのかしら。

 期待と不安が入り交じり、初めて訪問した訓練所で「うちは引き受けませんよ」という態度をあからさまに出されると少々凹む。緊張していたし、張り切ってもいた分だけ、しょんぼりする。保護犬はそんなに駄目なのかなあ。「殺されてしまう命を引き受ければ、犬は命が助かるし、私は安上がりだし、両者win-winだよね」ということしか、私に保護犬を選択する理由はない。飼うならちゃんとしつけを入れて飼おうと思っているが、意外と受け皿はないのかもしれない。他の訓練所も、ホームページに出ている犬は、一目で犬種が推察できる犬ばかりだし。まあめげずに別のところも問い合わせてみようと思っている。

*1:これはしないと説明したら、納得してくれたようだった。

「バットマン ビギンズ」※ネタバレしてます

 深く皴の刻み込まれた悲哀漂う顔、というのに弱い。何だか妙に惹かれてしまう。それだけの理由で、現在上映中の映画「ジョーカー」を観に行こうと思った。しかし、私はこれまでバットマンに接したことがない。だからジョーカーがどんな悪党なのかも知らない。どうせなら、ジョーカーが物凄く悪い奴だと知ってから観に行くほうが、より面白いだろう。そこで、名作の誉れ高いバットマン三部作その1「ビギンズ」をまず観てみた。

  •  身の捌き方の修業を何だかアジアの山奥でしてた。修業はアジアで、というのは定番なのだろうか。そしてアジアの山奥なのに、真のボスは白人だった。何だかな。
  • 渡辺謙とかモーガン・フリーマンとか、ハリウッド映画鑑賞数が少ない私でもわかる有名な役者さんが出ている。豪華。
  • 執事がいい味出してる。
  • ヒロイン、最後のシーンでどえらい垂れ目になってて、おたふくみたいだった。美人もカメラの向きによっては随分顔が変わるものだなあと。

  何だかんだで あっという間に二時間経ってしまった。面白かった。

バットマン ビギンズ (字幕版)
 

 

ついに禁断の一歩

 今回の映画を見るにあたり、遂に動画配信サービスに手を出してしまった。凄い便利でビックリした。今までレンタルするとなると、最寄りのレンタル店まで片道30分くらいかかっていたのが、自宅にて数分の手続きで見られるのだ。しかもその辺の店舗には在庫のない作品まで! 

 あれも見たい、これも見たいと鼻息が荒くなる一方で、今や引きこもりしててもネットにさえ繋がっていれば全然退屈しない時代だなあと痛感する。運動不足が加速する一方だわな。

ナチ本3冊

 夏季休暇中に読んだ本が、何故かどれもナチス関連の本だった。

 「増補 普通の人びと: ホロコーストと第101警察予備大隊」

 予備役として召集された人たちが、ユダヤ人の虐殺任務にかりだされ、どのように反応し、どのように馴らされていったのかを検証した本。予備役は現役の兵隊にはならない、30代以上の人達が中心である。家庭を持ち、自分の仕事のキャリアもある程度あり、社会人としての経験を備えた「大人」が、非戦闘員を追い立てて殺す行為をどのように捉えたのか興味深く読んだ。また、その「大人」は、今の自分と容易に重ね合わせられるので、その意味でも現実感を持ちやすかった。

 最初は「普通の人びと」を虐殺の最前線に立たせるのだけど、虐殺行為に馴染まないと見ると、最終的に手を下す作業は慣れた傭兵部隊に任せ、「普通の人びと」ユダヤ人の誘導と収容業務に変更している。そうして殺人に加担はさせるが、責任を感じないで済むようにさせていた。日本軍だったら、集団圧力をばんばんかけて無理矢理行為に慣れさせるだろうけどなあ。この辺の「無理をさせなさ」具合は、妙に手慣れた印象を持たせて逆に怖い*1。流石家畜の扱いに慣れた民族だなーと思わせるというか。

 第101警察予備大隊を研究した研究者は他にもいるのだが、他の研究者の主張への反論を、様々な公文書のデータを組み合わせて展開していたのが実に興味深かった。歴史学がどのように研究を行い、エビデンスを固めていくのか、その手法を垣間見た感じ。

増補 普通の人びと: ホロコーストと第101警察予備大隊 (ちくま学芸文庫 (フ-42-1))

増補 普通の人びと: ホロコーストと第101警察予備大隊 (ちくま学芸文庫 (フ-42-1))

 

 

ナチスと動物―ペット・スケープゴートホロコースト

 「血(遺伝)によって受け継がれていくこと」、「ユダヤ人は他民族(異教徒)の血を使った儀式を用いる」というデマをナチスがうまく使ったことを、様々な動物の扱い方によって説明した本。だが「普通の人びと」と、次に紹介する「ナチ 本の略奪」のインパクトが強過ぎて、内容を殆ど忘れてしまった。(というか、「ナチ 本の略奪」を完読するのに時間がかかり過ぎて内容を忘れた。)

ナチスと動物―ペット・スケープゴート・ホロコースト

ナチスと動物―ペット・スケープゴート・ホロコースト

 

 「ナチ 本の略奪」

 

*1:いや、日本軍の野蛮さも大概恐ろしいが、それとはまた質の異なる恐ろしさを感じる。